概 要
- サーキュラーエコノミーを発展させた循環経済モデル概念として、「Vortex Economy」を考案しました。
- 多様なステークホルダーと共に、「Vortex Economy」の実現に寄与する建築の具現化を目指します。
- 資材調達、建設、解体のあらゆる面で資源循環へ配慮する建築技術の開発に取り組んでいます。
提 案
新しい資源循環モデル「Vortex economy」の提案
大量生産・大量消費のリニアエコノミーから、資源をリサイクルするサーキュラーエコノミーの概念が広がっています。サーキュラーエコノミーは製品の生産・消費を円環状に接続した概念で、少ない種類の素材から成る消費財を中心に実現し始めています。
一方、建築は、多種多様で莫大な資源が使われており、消費財よりもライフサイクルが長いのが特徴です。使われている1つ1つの資源循環を実現するためには、製品や素材単位でのリサイクルだけではなく、資源が産業間で様々に形を変えながらカスケード状に環る必要があると考えました。この人工物と自然物を含む様々な製品のライフサイクルと、それらの間を行きかう資源の流れの図式を、水や空気の流れの中に生じる渦(Vortex)にたとえ、このコンセプトを「Vortex economy」と名付けました。
Vortex Economy® の概念図
Vortex economyを支える未来のまち
慶應義塾大学SFC研究所田中浩也教授と共に、Vortex economyを実現したまちの未来像を描きました。未来のまちでは、今では想像できない職能を持った人が必要とされ、新しい職業が生まれます。ユーザーの間で、資源(モノ)だけでなく、、モノを大切に思う気持ちもつながる、誰もがいきいきと暮らし、働く、豊かな生活の実現が可能となるリスペクトがあふれる社会です。そこでは、高度なデジタル技術をはじめ、材料、構造、設計、施工、環境などの技術を活用してまちを構築し、市民自らが参加し、まちを維持しています。
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まちの資源回収ステーション「Zero Waste Station」
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建築で資源をストックする「Vorterium」
Vortex economyを支える未来の建築
資源の需要と供給がバランスしなければ、廃棄物となってしまう可能性があるため、Vortex economyの実現には、資源をストックしながら、需給バランスを調整・管理する必要があります。建築は多種多様で莫大な資源をストックしており、それらのライフサイクルの長さも様々です。そのため、空間・時間を超えて資源どうしの循環の環をつなぎ合わせる結節点としての役割を担うことが期待できます。さらに、建築の「場」としての機能から、資源だけではなく、エネルギー、人、文化、資産を循環させる存在として、地域の環境、文化、経済の向上に寄与できると考えます。
Vortex architectureの循環図
Vortex economyにおける建築は、以下の9つの特徴を持ちます。
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【空間】
地域で環らす- 1:地域内のマテリアルやエネルギーを使う(地捨マテリアル、再生エネルギー)
- 2:地域の自然に還るマテリアルを使う(森林循環)
- 3:ストック機能を持ち、他者が必要な時にマテリアルやエネルギーを提供できる(BCP)
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【時間】
長く使える- 4:再資源化しやすいモノマテリアルの素材を使う(リサイクル)
- 5:モジュール性をもち、分解・再構成ができる(リユース)
- 6:変化する利用者のニーズに対し、アップグレードできる(アップサイクル)
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【人間】
リスペクトされる- 7:思い入れや愛着がわく長寿命なデザイン(パティーナ)
- 8:DB化により資源のストック&フローがマネージメントできる(デジタルツイン)
- 9:地球環境、自然、生態系を改善する(リジェネラブル)
今後、Vortex economyを支える建築を実現するため、様々なパートナーと共創していきます。