お客様のメリット
- 掘削を行わずに帯水層(地下水)の浄化を短期間で行うことが可能です。
- 短期間で浄化できるため、揚水処理などの従来技術より1/2以下の費用で浄化可能です。
- 微生物の浄化能力を利用するため、環境に優しく安全な浄化技術です。
技術の特徴
帯水層中の微生物を効率的に活性化できる
注水スパージングシステム
注水バイオスパージング工法(東邦ガス株式会社と共同開発)は、有用微生物を活性化する栄養水の供給施設をスパージング井戸*に付加し、スパージング井戸から空気と栄養水を同時に供給することにより、土壌を掘削せずに帯水層(地下水)の浄化を行える原位置バイオレメディエーション**技術です。栄養水はスパージング井戸からの送気圧を利用して速やかに地盤内に供給でき、井戸から広範囲に存在する有害物質を微生物分解することが可能です。また、注入水は揚水した汚染地下水を処理して循環利用するため、排水が生じず、有用微生物の活性を長期的に維持できることが確認されています。
* スパージング井戸:地上から帯水層(地下水)に空気(気体)を供給するための井戸
** バイオレメディエーション:微生物の浄化能力を利用して環境中の有害化学物質を浄化すること
様々な汚染物質に対応し、複合汚染にも適用可能
注水バイオスパージング工法は、ベンゼン、ガソリンなどの油類、シアン化合物など、好気性微生物で分解可能な汚染物質の浄化に適しています。一方、トリクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物などは嫌気性微生物を利用するため、窒素ガス等の不活性ガスを用いることにより浄化が可能です。また、微生物で分解できないヒ素や鉛のような重金属が上記の浄化対象物質と共存する場合には、スパージング井戸と揚水井戸による揚水循環量を増やし、重金属濃度を低減しながら浄化を進めることが可能です。つまり、注水バイオスパージング工法は、汚染物質の気化促進、微生物分解、揚水による抽出の3つの浄化効果により、様々な汚染物質に対応した浄化が行えます。近年では、浄化効果の高い微生物を活性剤と共に地盤に導入する方法を開発しており、より早く、確実に浄化を行うことが可能となっています。
高速浄化を支える浄化装置の開発
注水バイオスパージング工法は、汎用性の高いコンプレッサやポンプを用いて浄化でき、浄化規模に合わせてスパージング井戸本数を調整可能であるため、狭隘な敷地から広大な工場跡地まで、浄化規模に左右されずに適用できます。また、特殊スリット加工を施した鋼管を用いた打ち込み式スパージング井戸の開発により、井戸の設置期間が従来型のスパージング井戸を比較して1/10以下に短縮されました。本井戸は、引き抜いて再利用したり、斜め方向に打設したりすることも可能です。
注水バイオスパージング工法の模式図
浄化工事における地上施設の設置状況
実績・事例詳細
本工法による浄化実績を下表に示します。近年では、東京都の豊洲新市場予定地の地下水浄化工事にも適用されるなど、これまでに環境省の受託事業で実施した実証試験2件を含めて計9件、約60万m3の浄化実績があります。
No. | 浄化対象サイト | 浄化汚染物質 | 浄化土壌量 (m3) |
浄化期間 (月) |
新規技術の概要 |
1 | 石炭ガス製造工場跡地 | ベンゼン | 65,000 | 18 | ベンゼン汚染帯水層に対して適用 2つの帯水層に同時にスパージング可能な二層スパージング井戸を適用 |
2 | ガソリンスタンド跡地 | ベンゼン 灯油 |
3,000 | 6 | 打ち込み式スパージング井戸を適用 |
3 | めっき工場跡地 | シアン化合物 | 3,000 | 12 | シアン化合物汚染帯水層に対して国内で初めてバイオレメディエーションを適用 シアン分解菌の新規浄化促進剤の適用 |
4 | 石炭ガス製造工場跡地 | ベンゼン シアン化合物 |
80,000 | 24 | ベンゼンとシアン化合物の複合汚染地下水に対して適用 |
5 | 機械工場跡地 | 機械油 | 12,000 | 12 | 非揮発性油分に対して適用 |
6 | 化学工場 | トリクロロエチレン | 300 (試験工事) |
4 | 揮発性有機塩素化合物で汚染された帯水層に適用 嫌気性脱塩素化細菌の活性化のため、窒素ガスおよび有機資材を使用 |
7 | 石炭ガス製造工場跡地 | ベンゼン | 200,000 | 6 | 改良型の打ち込み式スパージング井戸を適用 |
8 | 石炭ガス製造工場跡地 | シアン化合物 | 60 (試験工事) |
4 | 難分解性の鉄シアノ錯体で汚染された帯水層に適用 微生物による浄化促進のため、鉄シアノ錯体の解離剤を使用 |
9 | 石炭ガス製造工場跡地 (豊洲新市場) |
ベンゼン シアン化合物 |
200,000 | 14 | 浄化期間を短縮するため、地下水の高速循環処理を適用 |
社外表彰
平成17年度土木学会環境賞I:原位置バイオレメディエーション技術を用いた汚染地盤の環境修復技術
平成22年度土木学会論文賞:揚水循環併用バイオスパージング工法によるベンゼン汚染帯水層の浄化特性
平成22年度土木学会環境賞I:石炭ガス製造工場跡地におけるシアン化合物汚染土壌・地下水の浄化技術の開発
平成22年度地盤工学会技術開発賞:汚染帯水層を対象とした揚水循環併用バイオスパージング工法
(注水バイオスパージング工法)の開発
平成24年度エンジニアリング協会エンジニアリング功労者賞:注水バイオスパージング工法開発グループ
平成25年度環境バイオテクノロジー学会技術賞:ベンゼン汚染土壌の好気的及び嫌気的浄化技術の開発
平成25年度第18回資源循環型ものづくりシンポジウム名古屋商工会議所会頭賞
:注水バイオスパージング工法によるベンゼン汚染地下水の浄化